化粧品ECサイトの課題と成功するポイントとは

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化粧品のECサイトを検討している事業者にとって、成功するためには現状の課題を正しく把握することが重要です。

化粧品は、大手企業以外がECで成功するのが難しいといわれています。その理由の一つに、気軽に立ち寄れる実店舗に見込み客が集中しやすいことが挙げられます。

実際に、経済産業省の「令和5年度電子商取引に関する市場調査」によると、化粧品・医薬品業界のEC市場規模は9,709億円であり、EC化率は8.57%と決して高い水準ではありません。

本記事では、化粧品のEC化を成功させるために、現状の課題と具体的な成功のポイントについて解説します。

※参考:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」

もくじ

化粧品のEC化とは

化粧品のEC化とは、インターネットを通じて化粧品やコスメ商品を販売することを指します。実店舗に行かなくても、国内外のさまざまな商品を購入できるため、消費者にとっても大きなメリットがあります。

また、実店舗の品ぞろえや営業時間に左右されることなく、自宅や外出先でも自分のペースで商品を検索・購入できるため、手軽に利用しやすい点もECの魅力です。

課題が残る化粧品のEC化

一方で、化粧品のEC化にはさまざまな課題があり、市場に定着するのが難しい状況となっています。ECサイトを構築すること自体は可能ですが、実店舗の強みと比べると、頻繁に訪問されるとは限りません。

実店舗には、ドラッグストアや百貨店、コンビニ、百円ショップなど多くの販売チャネルがあり、これらの競争が激化しています。特に、近隣に複数の競合ショップがあるエリアでは、価格競争や利便性の面でECサイトが不利になることもあります。

また、化粧品は実際に試してから購入したいと考える消費者が多いため、専門スタッフのアドバイスを求める傾向があります。加えて、日用品の買い物のついでに手軽に購入できる店舗も多く、ECサイトだけで顧客を獲得するのは簡単ではありません。

さらに、大手メーカーがECサイトを活用してブランド力を強化しているため、新規参入の事業者がブランド認知を高めるには高いハードルがあるといえるでしょう。

化粧品のEC化が進まない理由

化粧品のEC化がなかなか進まない背景には、さまざまな要因があります。ここでは、その具体的な理由について詳しく掘り下げていきます。

販売チャネルが多く、新規参入は厳しい

化粧品はドラッグストアや百貨店、コンビニといった店頭販売のほか、テレビ通販やカタログ通販、訪問販売など多様な販売チャネルが存在します。近年ではフリマアプリの普及により、個人間でも手軽に売買できるようになり、市場競争はさらに激化しています。

また、化粧品は世代を問わず利用されますが、消費者にとっては普段の生活圏で購入できる実店舗の利便性が大きな魅力となっています。特に、低価格の「プチプラ」商品を扱う店舗が増え、気軽に立ち寄れる点が強みです。

一方で、ECでは送料の負担があり、低価格商品は実店舗のほうが割安になりやすいという課題があります。逆に高額な化粧品は、購入前に試したいという消費者心理が働き、ECでの購入をためらう要因になっています。

さらに、「初回無料」「実質0円」といった宣伝による定期購入トラブルが問題視され、EC全体に対する不信感につながるケースもあります。このような背景から、新規参入で安定した集客を確立するのは容易ではありません。

送料や配送日数により、宅配をあまり好まないケースも

化粧品をECサイトで購入する際、送料の負担や配送日数の長さがネックとなり、利用をためらう消費者もいます。特に低価格商品では、「業者に負担をかけるのでは」と感じて注文を控えるケースもあります。

また、「今すぐ欲しい商品を1点だけ注文するのは気が引ける」「小さな荷物の配送が申し訳ない」といった心理的抵抗もあります。輸入商品の場合、発送遅延による不安からリピーターが定着しにくいことも課題です。

さらに、一人暮らしの女性は宅配の受け取りに不安を感じることが多く、置き配の盗難リスクを懸念する声もあります。宅配業者を装った犯罪が報道されることもあり、配送に対する不安がECの利用を妨げる要因となっています。

ECサイトの集客を安定させるには、送料や配送の課題を解決し、安心して購入できる環境を整えることが重要です。

ドラッグストアやコンビニの利便性に勝てない

化粧品を購入する際、多くの人が全国に展開するドラッグストアを利用しています。競合店も多く、近隣に複数の店舗があるのは珍しくありません。

ドラッグストアには美容部員が常駐し、化粧品のテスターを試せるなど、実店舗ならではのメリットがあります。また、新型コロナウイルスの流行時に解熱剤やマスクを販売し、その利便性を再認識した消費者も多くいました。

さらに、食品や日用品も購入できるため、買い物のついでに化粧品を購入しやすいのも強みです。コンビニもプチプラ化粧品が充実し、24時間営業でATMも利用可能なことから、高い利便性を誇ります。

このように、ECサイトは手軽に購入できる実店舗の存在がネックとなりやすいのが現状です。

低価格と高価格のブランドは店頭販売が強い

低価格のプチプラ化粧品は若年層に人気ですが、ECでは送料がかかるため実店舗より割高になりやすいのが課題です。特に10代はクレジットカードを持っていないことが多く、ECでの購入を敬遠する傾向があります。

一方、百貨店などで販売されるデパコスは価格が高いため、購入時に失敗したくないという心理が強く働きます。そのため、ECよりもアドバイザーのいる実店舗で相談しながら購入するほうが安心と考える人が多いです。

このように、低価格のプチプラと高価格のデパコスの両方で、ECの普及には課題があるといえます。

まずは試してから購入したい人が多い

化粧品やコスメ商品は直接肌に使うため、購入前に試したいと考える人が多いのが特徴です。ファンデーション一つでも、実際に肌の色と合わなかったり、イメージと違ったりして使わなくなるケースがあります。

また、化粧品は一度で使い切るものではないため、「満足できないけど、もったいないからとりあえず使う」「結局放置して別の商品を買う」といった状況も起こりがちです。こうした不満はECサイトの評判や顧客満足度(CS)の低下につながり、リピーター獲得の妨げになります。

さらに、カラーだけでなく香りも購入時の重要な要素です。実店舗ではテスターを試せますが、ECではこうした対応が難しく、購入前の不安を払拭できない点が大きな課題といえるでしょう。

デジタルマーケティングが難しい

化粧品やコスメ市場には国内外の大手企業が参入しており、デジタルマーケティングの広告費が高騰しています。そのため、中小規模のECサイトが十分なコンバージョン(CV)を獲得するのは容易ではありません。

また、Googleのアルゴリズム変更により、口コミやレビューを中心としたアフィリエイトサイトの検索順位が下がり、代わりに公式ブランドサイトやECモールが上位表示されやすくなっています。これは大手ブランドにとっては有利ですが、中小のECサイトにとっては上位表示のハードルがさらに上がる要因ともなっています。

さらに、検索結果で上位表示を狙うには、薬機法に抵触せず、専門性の高いコンテンツを制作する必要があります。しかし、質の高いコンテンツを作るには時間やコストがかかるため、十分なマーケティング施策が求められます。

化粧品のECサイトで成功するためには、資金計画を含めた戦略的なデジタルマーケティングの導入が不可欠といえるでしょう。

化粧品・コスメ商品のEC化で成功するポイント

これまでに述べたように、化粧品やコスメ商品は実店舗の強みが大きく、デジタルマーケティングの競争も激化しているため、EC展開には課題があります。

しかし、これらのハードルがあるからといって、ECで成功できないわけではありません。適切な戦略を取ることで、競争の激しい市場でも成果を上げることは十分可能です。

ここからは、化粧品・コスメ商品のEC化で成功するためのポイントを解説していきます。

ライブコマースの活用

ライブコマースは、自社サイトやSNSでライブ配信を行い、リアルタイムで商品の魅力を伝えられるのが大きなメリットです。視聴者は実際のカラーや使い方を確認できるため、商品のイメージがしやすく、購買意欲を高めやすい特徴があります。

また、単なる商品説明ではなく、視聴者のコメントに応じてコミュニケーションを取りながら進行できるため、飽きさせない工夫が可能です。エンターテインメント要素もあり、配信を楽しみながら商品に興味を持ってもらい、購入までスムーズに誘導できるのがポイントといえるでしょう。

インフルエンサーマーケティングの導入

化粧品業界は、テレビCMなどを通じてインフルエンサーの影響が強く反映される業界です。近年では、アイドルや女優に限らず、InstagramやYouTubeで活躍するインフルエンサーを起用し、ブランド認知を高める企業が増えています。

インフルエンサーはSNS上で多くのフォロワーを抱えており、商品の宣伝効果が高いのが特徴です。さらに、フォロワーにとっては信頼するインフルエンサーの推薦商品であるため、安心感を持ちやすいというメリットもあります。

このように、インフルエンサーマーケティングを活用することで、EC事業者はより多くの見込み客を獲得できる可能性が高まります。

オンラインサービスの導入

実店舗で提供される商品アドバイスをオンラインで実施することも可能です。ライブコマースとは異なり、1対1のリアルタイムコミュニケーションを通じて、肌の悩みや化粧品の選び方・使い方を個別にアドバイスできます。

自宅にいながら実店舗と同じようなサービスを受けられるため、利用者にとって大きなメリットとなります。また、顧客満足度(CS)の向上にも効果的です。

SNSコンテンツの配信

化粧品やコスメ商品のEC事業では、若年層の取り込みが重要となります。特に若年層は商品を探す際にSNSを最も活用するため、SNSを販売チャネルとして活用することが欠かせません。

中でも、化粧品やコスメ商品はInstagramとの相性が良く、ブランド認知の向上にはSNSコンテンツを効率的に配信することが重要です。

また、自社ブランドのストーリーや世界観を構築し、インフルエンサーマーケティングと組み合わせることで、より効果的な発信が可能になります。SNSを活用した戦略的なコンテンツ配信を進めていきましょう。

定期購入でリピーターの定着

EC事業において、新規顧客の獲得は容易ではありません。そのため、安定した売上を確保するには、リピーターの定着が重要となります。

CRM(顧客関係管理)を活用し、メルマガ配信や定期購入者向けの限定割引などの施策を実施することで、リピート率を向上させましょう。

特に定期購入は、回数に応じた特典や割引を提供し、お得感を演出することがポイントです。リピーターの継続購入は、EC事業において最も安定した収益源となります。

既存顧客が満足できる施策を取り入れ、定期購入を促進する仕組みを構築することが成功の鍵となるでしょう。

化粧品ECで成功するためのポイントと対策まとめ

化粧品のEC化は、販売チャネルの多さや実店舗の利便性などの課題が多く、デジタルマーケティングの難易度も高いのが特徴です。そのため、EC化を進めるには、まず課題を正しく把握することが重要です。

集客施策として、ライブコマースの活用やインフルエンサーマーケティングの導入を検討し、定期購入を促進してリピーターを定着させる戦略を実施しましょう。これらを効果的に取り入れることで、競争の激しい化粧品EC市場でも成功の可能性を高められます。

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