ECサイトの構築に課題が見られる事業者の多くは、ECサイトの効率化を図りたいと考えていることでしょう。ECサイトの業務は多岐にわたり、なかなか改善したくても時間がかかってしまい、着手することすらできないものです。
そこで、受注・発注・在庫・出荷までを一元管理できるシステムを導入することで、大幅に労力を軽減できるようになります。
ここではECサイトの一元管理システムの導入におけるメリットや選び方のポイントを解説していきます。
ECサイトの一元管理システムとは
ECサイトの一元管理システムとは、複数のECサイトにおける受注・在庫管理などの各種業務を一括で管理できるシステムです。
複数店舗を展開しているEC事業者にとって、商品数や店舗数が多くなると、それぞれ管理するのが大変になり、一つの店舗ごとに対応しているとかなりの労力となってしまいます。
そこで、複数の商品登録や顧客からの問い合わせなど、ECサイトの運営に時間がかかるような作業をまとめられます。ECサイトでの負担を軽減できるシステムなので、多店舗運営を展開しているEC事業者には大きなメリットといえるでしょう。
ECサイト運営におけるバックオフィス業務での課題
ECサイトの運営では、集客や売上向上につながる施策を実施することが重要です。しかし、日々の業務に工数がかかりすぎると、十分な時間を確保できず、施策の実行が後回しになってしまうことも少なくありません。
特に、取り扱う商品数が多いほど管理すべき情報も増え、業務負担が大きくなるため、ヒューマンエラーが発生しやすいという課題もあります。
ここでは、ECサイト運営におけるバックオフィス業務の主な課題について詳しく見ていきましょう。
入荷業務
まずは入荷業務です。商品が入荷されると、在庫に反映されますが、迅速かつ正確にデータを登録しなければ商品の販売機会を失ってしまいます。入荷業務は在庫管理と連動しておくべきであり、商品の種類・サイズ・カラーといった内容は、数量とともにしっかりと在庫データに反映しなければなりません。
在庫管理
入荷された商品は在庫となって管理していきます。在庫管理を怠ると商品の購入手続きを済ませた顧客の在庫がないということに成りかねません。
そうなるとクレームの対象になりますし、CSも低下してしまいます。逆のパターンもあり、在庫がないと判断して仕入れを増やしてしまうと、今度は余剰在庫となってムダなコストを抱えてしまうことになります。
ECサイトで複数店舗を運営し、さらに実店舗も展開している場合、適正な在庫の見える化ができていないと現場は混乱してしまうでしょう。
梱包
商品の購入手続きが完了すると、在庫から発送手続きにはいります。商品を梱包して顧客ラベルを貼付し、出荷の手続きを行います。ECサイトの立ち上げだと自社で行えますが、複数店舗を展開していくようになると、外部業者に委託するほうがコストも削減できます。
ただ、システムの共有やセキュリティ面など、効率化には課題も多いものです。
出荷・配送
出荷の手続きから配送業務に移ります。出荷業務以降は物流業者に委託している事業者も多く、梱包から出荷でミスがあると自社ではすぐに気づけないのでお客様の元へと届きません。
クレームはECサイトの評判を下げますし、リピーターとなりえる顧客を失ってしまいます。注文を受けてから出荷業務までを人が作業している場合、人員的な要因でミスを引き起こしやすくなり、せっかく商品に満足できてもCSの低下となってしまう可能性があります。
ECサイト一元管理システムの機能
ECサイト一元管理システムの機能は下記になります。
- 発注管理機能
- 受注管理機能
- 在庫管理連携機能
- 商品登録機能
- 出荷管理機能
- 売上・決済管理機能
- 問い合わせ管理機能
それぞれの特徴を一括で管理していくことで、スマートなECサイトの運営を実現しています。
発注管理機能
ECサイトを複数展開していると、一定の在庫を抱えないと迅速な発送ができません。実店舗も兼用している場合ならECサイトの発注書とかぶることもあり、余剰在庫につながってしまいます。
そこで、発注した商品データが一元管理できると、どのショップにも自動的に商品の発注数や残データが反映されるようになります。また、自動で発注書を作成できるので、ECサイトで複数店舗を運営しているような事業者は、商品数が多くても負担が軽減されるでしょう。
受注管理機能
複数のECサイトを運営していると、ユーザーからの注文情報が多くなるので複雑になってしまいます。これも「注文済」「入金済」「在庫なし」「発送待ち」などステータスが異なるので、人的作業だと注文の確認が遅れますし、ミスが生じて発送先を誤ってしまう可能性も出てしまいます。
受注管理機能では注文情報を一元管理できるので、ユーザーの注文情報にはステータスが自動的に反映されて振り分けられ、迅速に発送手続きに入れますし、対応漏れも防げます。
在庫管理連携機能
複数店舗の運営だと商品数も多くなってくるので、手作業の在庫管理は労力がかかります。特に注文キャンセルが入ると発注を取り消す作業もしなくてはならず、人的ミスも発生しやすくなるものです。
在庫管理連携機能があれば、常に最新の在庫情報が把握できるので、適正在庫となるように自動的に発注手続きに入れます。在庫切れも防げますので、商品の販売機会を失わずにECサイトの運営に集中できるでしょう。
商品登録機能
商品登録機能とは、ECサイトの商品登録を複数店舗で一括登録できる機能です。一つの商品を登録する場合、複数のECサイトに一回ずつ更新するのも大変な作業といえます。
商品登録を予約できるシステムもあり、タイムセールなどのキャンペーンにも活用できます。
出荷管理機能
出荷管理機能は倉庫への出荷指示や発送手続きを自動で更新できます。倉庫の在庫数が減ると、自動的にECサイトの商品ページにも反映されるので、ユーザー側もまだ在庫が残っているのかが分かるようになるので、注文キャンセルを防げます。
売上・決済管理機能
入金手続きの確認は人的作業だと漏れが生じやすくなり、間違えると入金されていないのに商品を発送してしまう恐れがあるものです。
売上・決済管理機能はECサイトの決済システムと連携して入金処理や確認を行い、スムーズな発送手続きが可能となります。売上管理では、商品の売れ行きや期間別の売り上げを元に販促の戦略に活用できます。
問い合わせ管理機能
ECサイトの一元管理システムには自動的にメールを送信できる問い合わせ機能があります。注文確認メールや入金確認メール、発送完了メールなど、ユーザーが確認できて漏れがないことを証明できるシステムといえます。
このメール管理を手動で行うとなると労力がかかり過ぎますし、漏れがあるとユーザーを不安にさせてしまうでしょう。
注文後のステータスに応じてメールを自動送信できるので、一元管理システムには必須の機能です。
ECサイトで一元管理システムを導入するメリット
ECサイトで一元管理システムを導入すると、管理業務の負担が軽減されるのでコスト削減や労力を他の作業に回すことが可能で事業者にとっても大きなプラスといえます。
次に一元管理システムのメリットを解説していきます。
ECサイト全体の効率化
これまで受注や在庫管理を手作業で行っていた場合、確認作業だけでも大きな負担となっていたはずです。店舗が1つで取り扱い商品が少ないうちは手作業でも対応可能ですが、複数店舗を運営するようになると、商品のバリエーションが増え、管理業務にかかる時間が膨大になり、ミスのリスクも高まります。
そこで、一元管理システムを導入することで、受注や在庫のデータを連携し、業務の効率化を図ることが可能になります。これにより、事業者の負担が軽減されるだけでなく、人件費の削減や、作業員をより重要な業務に配置することで、全体的な生産性向上につなげることができます。
複数店舗の運営が管理しやすい
実店舗に加えて複数のECサイトを運営している場合、商品や在庫、受注、入金などの管理業務が複雑化しやすいものです。さらに、サイトごとに管理方法が異なると、業務の手間が増え、負担が大きくなります。
そこで、一元管理システムを導入すれば、すべてのECサイトの管理フォーマットを統一でき、受注処理や商品登録、在庫管理を自動で更新することが可能になります。これにより、作業負担を大幅に軽減し、業務の効率化が実現できます。
一元管理システムは、複数のECサイトを運営する事業者にとって、各工程をスムーズに管理できる有効なツールといえるでしょう。
見込み客の流出を防ぐ
在庫管理を人が確認していると、どうしても確認漏れが生じて在庫切れが発生してしまいがちです。一元管理システムでは在庫管理機能によって自動的に商品を注文して在庫切れを防ぎます。
ターゲットが検索で訪問したにもかかわらず、商品ページの在庫がないと判明すると、その見込み客が他店に流出してしまいます。
在庫管理機能を搭載した一元管理システムは見込み客の流出を防ぐのに効果的です。
人的要因のミスを軽減
注文確認から在庫確認、注文、入金確認、発送手続きと人が携わる機会が増えるほど人的要因となるヒューマンエラーが生じやすくなります。特に複数店舗の運営にはこのミスが起きやすくなりますので、一元管理システムによる自動化によってミスを軽減できるでしょう。
ミスはクレームに直結し、CSの低下を招いてしまうので一元管理システムの導入は未然にトラブルを防止するのに活用できます。
人手不足の解消
少子化による人手不足は多くの業界で深刻な課題となっていますが、一元管理システムを導入し業務を自動化することで、人手不足の影響を軽減できます。
また、削減できた労力を商品開発やマーケティングに活用することで、ECサイトの成長や競争力の強化につなげることも可能です。業務の効率化とともに、事業全体の活性化を図る手段としても有効といえるでしょう。
ECサイトの一元管理システムを導入するデメリット
多くのメリットがある一元管理システムですが、ECサイトに導入することで生じるデメリットもあるので注意が必要です。
導入コスト
手作業での管理には人件費がかかりますが、一元管理システムの導入には初期費用やランニングコストが発生します。
具体的には、初期費用のほか、月額料金や受注件数に応じた従量課金制などがあり、システム提供会社によって料金プランが異なります。導入前にコストと運用効果をしっかり比較検討することが重要です。
業務フローの見直し
新しいシステムを導入すると業務フローが変更されるため、EC事業者のスタッフに混乱が生じやすくなります。
すぐにシステムに慣れない作業者が出る可能性があるほか、人員配置の変更によってモチベーションが低下する従業員が出ることも考えられます。
スムーズな移行を実現するために、マニュアルの作成や研修会を実施し、すべての従業員が新しい業務フローに適応できる環境を整えることが重要です。
ECサイトの一元管理システムを選ぶポイント
ECサイトに一元管理システムを導入する際は、自社の業務に最適なシステムを選定することが重要です。さまざまな提供会社があるため、機能やコスト、導入のしやすさなどを比較しながら検討する必要があります。
ここでは、一元管理システムを選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。
適切な料金体系
まずは料金体系です。一元管理システムには、初期費用のほかに「月額料金」・「従量課金」といった料金体系があります。システムの提供会社によっても異なりますし、EC事業の規模によってもプランが異なります。
月額定額制
月額定額制は受注件数や商品点数、ECサイト数に上限を設けて毎月定額の固定料金を支払うプランです。システム全体ではなく、「在庫管理機能と受注管理機能をメインに活用したい」「在庫管理だけ導入したい」という業務内容に合わせたプランも可能なタイプもあります。
毎月定額になるのでコストを算出しやすく、従量課金制に比べてEC事業の規模が大きくても選びやすいでしょう。
従量課金制
従量課金制は受注件数に応じて料金が発生するプランです。1件当たり数円から数十円が主な相場で、件数が増えるほど単価が安くなります。
毎月のコストが変動しやすいので、コスト管理には注視する必要があります。
実店舗や他のシステムとの連携
実店舗を運営しているEC事業者の場合、実店舗とECサイトの連携が可能なシステムを導入することで、より効率的な販売体制を構築できます。
実店舗のPOSシステムや倉庫管理システムと連携すれば、リアルタイムで在庫や受注情報を一括管理でき、注文漏れや在庫切れを防ぐことが可能になります。
また、すでに自社ECサイトで管理システムを運用している場合は、多少コストがかかっても連携しやすい一元管理システムを選ぶのがおすすめです。
無料トライアルの実施
どのシステムが自社に適しているか不安な場合は、無料トライアルを活用し、実際の業務フローに合うか検証することが重要です。
一度導入したシステムが自社の運用に合わないと、業務が円滑に回らず、最悪の場合はユーザーへの商品の配送遅延や管理ミスにつながる可能性があります。
さらに、導入コストを回収できなければ、EC事業の継続に支障をきたすリスクもあるため、慎重に選定し、トライアルを活用しながら導入を検討するのがおすすめです。
ECサイト運営の効率化には一元管理システムの導入が有効
ECサイトの運営をスムーズに進めるためには、業務の効率化と負担軽減を実現する一元管理システムの導入が有効です。手作業による業務の工数を削減し、バックオフィス業務の最適化にも大きく貢献します。
ただし、システム導入に伴い業務フローの見直しが必要になる場合もあるため、料金体系や他のシステムとの連携、無料トライアルの活用などを慎重に検討することが重要です。自社の運営に適したシステムを選び、ECサイトの成長と安定した運用を目指しましょう。