在庫にも税金がかかる?不要なものを処分して税負担を軽減しよう

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ECサイトで商品を販売する場合、倉庫を借りて在庫を保管する必要があります。しかし、在庫が増えると品質の劣化だけでなく、税金による支払い負担も増えてしまいます。

事業を運営している以上、税金の支払いは避けられませんが、過剰な在庫があると税額も増え、経営に大きな影響を与える可能性があります。そのため、在庫管理を適切に行い、税負担を軽減する対策を講じることが重要です。

本記事では、在庫による税金負担の仕組みや、節税の方法、注意点について解説します。

この記事で分かること
・在庫による税金の負担
・在庫の経費計算方法
・在庫を活用した節税対策と注意点

もくじ

在庫にも税金がかかる?その仕組みを理解しよう

ECサイトなどで商品を販売する際、一定の在庫を確保して保管する必要があります。しかし、在庫には税法上のルールが定められており、正しく理解していないと、予想以上の税負担が発生する可能性があります。

ここでは、在庫にかかる税金の仕組みや注意点について詳しく解説します。

在庫が増加すると課税対象になる

税法では、期末の在庫が前期末より増加すると、法人税などの課税対象となる仕組みになっています。在庫自体は売上にはなっていませんが、将来的に現金化される資産とみなされるため、預金と同じような扱いを受けます。

そのため、在庫が増えるほど課税額も大きくなり、経営コストの負担が増大する可能性があります。特に、ECショップを法人として運営している場合は、この仕組みを正しく理解し、適切な在庫管理を行うことが重要です。

在庫金額による税金負担の変化

在庫は課税対象となりますが、**在庫金額によって税額が変わります。**具体的な計算例を見てみましょう。

〈ケース1:期末在庫100万円の場合〉
売上原価は、以下の計算式で求められます。

前期末の在庫100万円 + 今期の仕入高1,000万円 − 今期末の在庫100万円 = 売上原価1,000万円

仮に売上が1,500万円の場合、1,500万円 − 1,000万円 = 500万円 となり、利益は500万円です。

〈ケース2:期末在庫が120万円に増えた場合〉
同じ計算式を適用すると、

前期末の在庫100万円 + 今期の仕入高1,000万円 − 今期末の在庫120万円 = 売上原価980万円

この場合、1,500万円 − 980万円 = 520万円 となり、利益は520万円になります。

〈在庫増加による影響〉
在庫金額が100万円から120万円に増えると、売上原価は1,000万円から980万円に減少し、その結果、利益が20万円増加します。

しかし、利益が増えるということは、その分法人税の課税対象となる金額も増えるため、在庫が増えるほど税負担が大きくなる仕組みになっています。

在庫は2種類に分けられる

在庫は、外部から購入した商品・原材料と、自社で製造した製品の2種類に分けられます。それぞれの在庫には、計上すべき費用が異なります。

① 外部から購入した商品・原材料の在庫

購入した商品や原材料には、以下のような費用が含まれます。

  • 商品の検品費用(販売のために直接使用した費用)
  • 運送費(原材料の輸送や消費のために直接かかった費用)
  • 梱包材費・販売に要した費用
項目金額(万円)
購入した商品100
検品や販売にかかった費用10
梱包材費・運送費50
合計160

② 自社で製造した商品の在庫

自社で製造した商品も、在庫として計上できます。以下のような費用が含まれます。

  • 原材料費(製造に必要な材料費)
  • 工賃(製造のための人件費)
  • 工場の電力・家賃などの諸経費
  • 販売所までの運賃・販売のための費用
項目金額(万円)
原材料費100
製造工賃200
電力・家賃などの諸経費200
運賃・販売費用200
合計700

在庫として計上する総額

外部購入品(160万円)+ 自社製造品(700万円)= 合計860万円

それぞれの費用を適切に確認し、在庫として正しく会計処理を行うことが重要です。

付随費用の範囲を確認しよう

付随費用は経費として計上でき、税負担を軽減することが可能ですが、その範囲を正しく理解しておくことが重要です。

購入した商品や原材料については、金額の大小に関係なく、付随費用を経費として計上できます。 一方、自社で製造した商品の場合、事業税や地方法人特別税、借入金の利子なども付随費用として含めることができます。

ただし、在庫に含まれる付随費用は、年度の購入金額や製造費用の3%以内であれば経費計上が可能です。少額であっても適切に計上することで、税負担の軽減につながるため、しっかり確認しておきましょう。

在庫の金額計算はどのように行うのか

在庫の金額は所得金額や法人税に影響を与えるため、適切な計算方法を理解しておくことが重要です。税法上、在庫の金額計算にはいくつかの方法が定められており、それぞれの特徴を把握する必要があります。

ここでは、在庫の金額計算の方法について詳しく解説します。

原価法とは?

原価法とは、商品の購入価格や製造費用に基づいて在庫の金額を計算する方法です。原価法には6種類の計算方法があり、それぞれ異なる特徴を持っています。

計算方法概要
個別法在庫ごとに個別の価格を適用し、厳密に計算する方法
先入先出法先に仕入れた商品から順に売却したと仮定して計算する方法
総平均法年度の平均購入単価をもとに在庫の金額を算出する方法
移動平均法売却のたびに平均単価を計算し直して在庫の金額を求める方法
最終仕入原価法その年に最も新しく仕入れた単価で在庫の金額を計算する方法
売価還元法売価に原価率を掛けて在庫の金額を算出する方法

① 個別法

個々の在庫に対して購入価格を適用し、厳密に計算する方法です。

商品購入価格売却在庫として残る
A1万円売却済
B2万円売却済
C3万円未販売3万円(在庫)

② 先入先出法

実際の取引に関係なく、先に購入した商品を先に売却したと仮定して計算します。

③ 総平均法

年度内の平均購入単価を計算し、その単価を基に在庫の金額を算出します。

購入商品購入価格購入数合計金額平均単価
A1万円5個5万円1万円

④ 移動平均法

売却のたびに平均購入単価を計算し直す方法です。

購入日購入価格合計購入額購入回数平均単価
3月2万円2万円1回2万円
5月3万円5万円2回2.5万円
8月4万円9万円3回3万円

この場合、最終的な平均購入単価は3万円になります。

⑤ 最終仕入原価法

その年の最終仕入れ時の単価を在庫の金額として計算します。

⑥ 売価還元法

売価に原価率を掛けて在庫の金額を計算する方法です。

以下は在庫の購入価格が12万円だった場合の例です。

項目計算式結果
売価20万円
原価率12万円÷20万円60%
在庫(5万円)5万円×60%3万円

在庫に残っている商品1個(5万円)に原価率60%を掛けることで、在庫の金額は3万円となります。

低価法とは?

低価法とは、原価法で算出した在庫の金額と、期末時点での時価を比較し、どちらか低い方を採用する計算方法です。

時価とは、今季末の時点での売却価格を指します。一般的に、仕入れた商品は市場価値が下がるリスクがあり、特に電化製品などは新モデルが次々と登場するため、在庫の価値が大きく下がることがあります。

例えば、型落ちした商品の在庫を抱えた場合、帳簿上の価額(仕入れ時の価格)と市場価値が合わなくなることがあります。そのまま帳簿上の金額を適用すると、実際の価値よりも高く評価され、結果的に利益が多く計上されてしまいます。

低価法を適用することで、在庫の評価額を実際の市場価値に近づけ、事業年度ごとの税負担を軽減することが可能です。税金対策として、低価法の仕組みを理解しておきましょう。

在庫の含み損について確認

在庫で生じる含み損は、無条件ですべて経費として計上できるわけではありません。経費として認められる範囲は税法で定められているため、該当するかどうかを確認することが重要です。

含み損として計上できるのは、以下のようなケースです。

  • 売れ残った季節商品で、明らかに通常価格で売れないもの
  • 新商品が発売され、型式・性能・品質が大きく異なり通常価格で売れなくなったもの

これらは税法上、含み損の対象として認められているため、経費として計上できます。

一方、含み損として認められないケースもあります。

  • 物価変動:物価の上下変動による価値の変化
  • 過剰生産:需要を超えて生産し、売れ残ったもの
  • 建値の変更:価格改定による値下げ

物価変動や過剰生産、価格改定による値下げが原因で在庫の価値が下がった場合は、含み損として経費計上することはできません。

ただし、方法によっては含み損を経費として計上することが可能です。例えば、過剰生産によって通常価格で販売できなくなった場合でも、購入価格より安価で売却すれば、その差額を含み損として計上できます こうした客観的な評価ができる場合は経費として認められることがあるため、それぞれの状況を確認し、適切に処理することが大切です。

在庫の税金負担を軽減する方法とは?

ここまで、在庫にかかる税金の仕組みについて説明してきました。在庫は事業運営に欠かせないものですが、適切に管理しないと税金の負担が大きくなってしまいます。 そこで、在庫の税負担を軽減するための方法を理解し、適切に対策を講じることが重要です。

ここからは税金の負担を抑えるための具体的な節税対策について紹介します。

決算時には在庫を減らした方が良い

決算時に在庫を減らすことで、税金の負担を軽減することが可能です。税金は売上総利益に対して課税されますが、その計算には売上原価が大きく関係しています。

売上総利益は、以下の計算式で求められます。

売上総利益 = 売上高 − 売上原価

この売上原価は、次の式で計算されます。

売上原価 = 期首在庫 + 仕入高 − 期末在庫

在庫として残っている分は売上原価に含まれないため、期末在庫が多いと売上総利益が高くなり、結果として税負担が増加します。 そのため、決算前に在庫を減らし、売上総利益を抑えることで、税負担を軽減することができます。

在庫を減らす方法として、セールの実施や不要在庫の処分など、事業の状況に応じた対策を検討しましょう。

個人事業主は青色申告を活用しよう

個人事業主として運営している場合、在庫を管理するために倉庫を借りるケースもあるでしょう。仕事で使用する物品は基本的に経費として計上できますが、節税対策として青色申告を活用するのがおすすめです。

白色申告では基礎控除額が48万円ですが、青色申告の場合は最大65万円まで控除が可能なため、税金の負担をより軽減できます。 また、ECサイトの運営などでは、在庫確保のために倉庫を借りたり、商品を仕入れたりすることが多いため、適切な節税対策を行うことが重要です。

さらに、減価償却の条件に該当する場合は、数年に分けて節税が可能です。白色申告でも減価償却は適用できますが、青色申告には少額減価償却資産の特例があるため、減税の面で有利になります。

将来的に収入が増えることを見越して、早めに青色申告を導入し、節税に備えておきましょう。

在庫の税金を軽減するために注意すべき点

在庫の税金を軽減するために、倉庫内の整理や適切な管理を行うことは有効な方法ですが、節税を意識しすぎるあまり、思わぬリスクを招く可能性もあります。 特に、税務署からの指摘を受けると、修正申告や追加の税負担が発生することもあるため注意が必要です。

青色申告の場合、棚卸表は7年間の保存が必要

利益や税金を正しく計算するためには、商品の棚卸金額を適切に管理することが重要です。保存期間は、青色申告が7年、白色申告が5年と定められています。

青色申告で作成した棚卸表は、7年間破棄せずに保管する必要があり、紛失すると税金の控除を受けられなくなるため注意が必要です。

また、青色申告の場合は、白色申告と異なり、多くの書類を保存しておく必要があります。以下が保存しておかないといけない書類です。

  • 帳簿類:仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳
  • 決算書類:損益計算書、賃借対照表、棚卸表
  • 取引関連書類:領収書、小切手、預金通帳、信用証 など
  • その他の必要書類

これらの書類の中には、確定申告の際に税務署へ提出する必要がないものもありますが、税務調査の際に求められることがあるため、適切に管理しておきましょう

帳簿を不正に操作して在庫数を減らすのはNG

在庫数が多いと税金の負担が増えるため、適切に管理し、必要に応じて在庫を減らす努力が求められます。しかし、帳簿を不正に操作して在庫数を減らす行為は絶対に避けるべきです。

帳簿上の在庫を減らすことで、税金の支払いを一時的に抑えることはできますが、税務調査で発覚すると、悪質な手法とみなされる可能性があります。

特に、税務署から指摘を受けた場合、「重加算税」というペナルティが科され、結果的に税金の負担がさらに大きくなる恐れがあります。

不要な商品を処分して在庫を適正に減らすことは問題ありませんが、実際に在庫が減少していないのに帳簿を操作するような不正行為は絶対に行わないようにしましょう。

課税事業者になる場合の注意点

個人事業主は、「課税事業者」と「免税事業者」のどちらかを選択できます。免税事業者であれば、消費税の納税が免除されるため、税負担を軽減することが可能です。しかし、課税事業者になると、消費税の納税義務が発生するため、コスト負担が増える点に注意が必要です。

取引先との関係や取引条件によって、課税事業者として登録するケースもありますが、消費税の計算や納税を見越した資金管理が求められます。 また、課税事業者から免税事業者に変更した場合、期末の在庫は当期の売上に対応しないため、節税効果は期待できないことも覚えておきましょう。

在庫が増えると税金も増加?適正管理で節税につなげよう

ここまで、在庫にかかる税金について解説してきました。在庫が増えると税負担が大きくなり、経営を圧迫する原因になります。そのため、適切に在庫を管理し、必要に応じて在庫を減らすことで、節税対策を行うことが重要です。

在庫を最適にコントロールしながら、効率的な経営を目指しましょう

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