商品の販売は、実店舗だけでなくオンラインでも行いたいと考える事業者は多いでしょう。
ネット販売の代表的なプラットフォームとしてAmazonがありますが、利用するには管理費や手数料などのコストがかかります。収益を確保するためには、これらのコストを正確に把握した上で出店を検討することが重要です。
そこで今回は、Amazonに出品する際の手数料を含めた費用について、詳しく解説します。
この記事で分かること
・Amazonで出店するときの手数料の種類
・Amazonで出店するメリット
・Amazon出店に伴う販売の注意点
Amazonに出店するときの手数料の種類
Amazonに出店する際には、さまざまな手数料が発生します。どのような種類の手数料があり、どれくらいの費用がかかるのかを把握しておくことは、出店を検討する上で重要です。
月間登録料
Amazonに出店する際は、月間登録料が必要になります。
登録料は出品プランによって異なり、「大口出品」と「小口出品」の2種類があります。
出品プラン | 月間登録料 |
---|---|
大口出品 | 月額4,900円 |
小口出品 | 100円/1商品 |
大口出品プランは、月額4,900円で何点でも出品可能なため、多くの商品を販売する場合に適しています。一方、小口出品プランでは、1商品ごとに100円の手数料が発生します。
そのため、出品数が49点以下であれば小口の方がコストを抑えられますが、50点以上になる場合は大口に切り替えた方が割安になります。
どのプランを選択するかは、出品予定の商品数に応じて慎重に判断することが重要です。
販売手数料
販売手数料とは、商品が売れた際に発生する手数料のことです。手数料の割合は商品カテゴリーごとに異なり、8~15%が一般的です。
例えば、以下のカテゴリの商品は販売手数料が8%に設定されています。
- テレビ・レコーダー
- 携帯電話・スマートフォン
- カメラ
- パソコン・周辺機器
一方で、15%の販売手数料が適用されるカテゴリは以下の通りです。
- 本・ミュージック・DVD
- ビデオ
その他のカテゴリでは、以下のような手数料が設定されています。
- 家電アクセサリー・楽器:10%
- Amazonデバイス用アクセサリー:45%
このように、販売手数料はカテゴリごとに異なるため、事前に確認した上で価格設定を行うことが重要です。また、手数料を考慮せずに価格を設定すると、利益が思ったよりも少なくなってしまう可能性があります。
しかし、価格を高く設定しすぎるとユーザーが購入をためらう原因にもなるため、適正なバランスを考慮しましょう。
カテゴリー成約手数料
カテゴリー成約手数料は、販売手数料とは異なる手数料で、特定のカテゴリーの商品に対して設定されています。
すべての商品に適用されるわけではなく、該当するカテゴリーの商品を出品する場合は、追加のコストとして把握しておく必要があります。
例えば、以下のカテゴリでは成約手数料が発生します。
カテゴリー | 成約手数料 |
---|---|
本 | 80円 |
ミュージック | 140円 |
DVD | 140円 |
ビデオ | 140円 |
手数料自体は比較的低額ですが、大量に販売する場合は利益に影響を与える可能性があるため、事前に考慮して価格を設定することが重要です。
成約手数料を含めたコストを正確に把握し、適正な価格設定を行いましょう。
FBA利用の手数料
FBA(Fulfillment by Amazon)は、Amazon独自の物流サービスであり、在庫の保管や配送業務の代行を行ってくれます。
これにより、出品者は販売時の運用負担を軽減できますが、その分手数料が発生するため、費用負担が適切か事前に確認することが重要です。
配送代行手数料
FBAを利用した配送代行手数料は、商品のサイズと販売価格によって変動します。
以下は、1,000円以上の商品を配送する場合の手数料の目安です。
サイズ区分 | 寸法 | 重量 | 金額 |
---|---|---|---|
小型 | 25×18×2,0cm以下 | 250g以下 | 288円 |
標準 | 35cm x 30cm x 3.3cm~100cm以下 | 1kg~9kg以下 | 318〜603円 |
大型 | 60cm~200cm以下 | 2kg~40kg | 589円〜1,756円 |
超大型 | 200cm~260cm以下 | 50kg以下 | 2,755円〜5,625円 |
商品のサイズが大きくなるほど手数料も高くなるため、利益率を考慮しながらFBAを利用するか判断する必要があります。
在庫保管手数料
FBAを利用する場合、在庫保管手数料も発生します。この手数料は、1日あたりの平均スペース使用量を基に算出され、商品のサイズやカテゴリによって異なります。
長期間在庫を保管すると手数料が増加するため、販売計画を立てた上で、在庫管理コストも考慮することが大切です。
返金処理手数料
返金処理手数料とは、購入された商品が返品された際に発生する手数料です。返金処理自体はAmazonが対応してくれますが、手数料は出品者が負担するため、事前に確認しておくことが重要です。
返金処理手数料には2つの計算方法があり、金額の低い方が適用される仕組みになっています。
- 5,000円以下の商品は商品代金の10%
- 5,000円を超える商品は500円
例えば、4,000円の商品が返品された場合、手数料は400円(10%)が適用されます。
一方、6,000円の商品が返品された場合は、500円の手数料が適用されます。
返金が頻発するとコストが積み重なり、大きな出費につながる可能性があるため、返品率を抑える工夫も必要です。
大量出品手数料
大量出品手数料とは、Amazon独自の商品コード(SKU)の登録数が200万点を超えた場合に発生する手数料です。
大規模な事業者では、大量の商品を出品するケースもありますが、SKUが200万点を超えると、1点あたり0.05円の手数料が毎月請求されます。
例えば、「SKUが200万点を超えた場合、手数料だけで毎月10万円(0.05円×200万点)」が発生するため、非常に大きなコスト負担となります。
ただし、この手数料は主に大規模な事業者向けであり、一般的な出品者は気にする必要がないでしょう。大量出品を計画している場合は、SKUの管理を適切に行い、不要な登録を増やさないように注意することが重要です。
その他の手数料
Amazonで出品する際は、利用するサービスによって追加の手数料が発生する場合があります。
例えば、以下のような手数料がかかる点に注意が必要です。
- クーポン発行手数料、1回の引き換えにつき60円(税抜)
- 代引き手数料
- 配送料のチャージバック
各手数料の詳細を事前に確認し、コストを把握した上で適切に運用することが大切です。
Amazonへの出店を考えるべきメリットとは?
Amazonに出店する際にはさまざまな手数料が発生しますが、その分多くのメリットもあります。実際、多くの事業者が手数料を負担してでもAmazonを利用していることから、その魅力が大きいことは明らかです。
Amazonに手数料を支払っても得られるメリットには、以下のようなものがあります。それぞれ詳しく紹介していきます。
発送などの業務を効率化できる
Amazonに出店することで、業務の効率化という大きなメリットを得られます。手数料は発生しますが、商品の登録、倉庫保管、発送、返品対応など、個人で行うと手間のかかる作業をAmazonに任せることが可能です。
特に、大量の商品を販売する場合、個人で対応しきれないケースもありますが、Amazonの物流サービスを活用すればスムーズに運営できます。
そのため、手数料を支払ってでも業務負担を減らし、売上を伸ばしたい場合には、Amazonの出品が有効な選択肢となるでしょう。
圧倒的な集客力を得られる
Amazonは圧倒的な集客力を誇るため、出店することで売上の向上が期待できます。国内のECサイトの中でも利用者数が非常に多く、毎日多くのユーザーが売買を行っているため、出品した商品を見てもらえる機会が大幅に増えます。
一方、自社サイトで販売する場合は、知名度を上げるためにSEO対策や広告運用を行う必要があり、長期的な集客戦略が求められます。その点、Amazonはすでに知名度が高いため、短期間で商品を出品し、売上を得られる可能性が高まります。
そのため、集客力を活かして利益を伸ばしたい事業者にとって、Amazonは魅力的な販売チャネルの一つと言えるでしょう。
手数料を含めても初期投資は安く済む
Amazonに出品する際、手数料はかかりますが、初期投資という点では比較的安価です。
出品プランには大口出品と小口出品があり、大口プランでも月額4,900円(税込)と、ECサイトを構築する場合に比べて低コストで運用を開始できます。
さらに、販売手数料やカテゴリー成約手数料なども発生しますが、基本的に月額料金以外の手数料は商品が売れた際にのみ発生するため、価格設定によっては大きな負担にはなりにくいでしょう。
一方、自社でECサイトを構築して販売する場合、サイト制作のためのエンジニア依頼、サーバーの構築、システム設計などが必要となり、初期費用だけで数百万円かかることもあります。
特に、個人事業主や小規模な事業者の場合、高額な初期投資は大きな負担となるため、Amazonへの出品はコスト面でも大きなメリットがあると言えるでしょう。
入金サイクルが早い
Amazonの大きなメリットの一つに、入金サイクルの早さがあります。出品アカウントを開設し、銀行口座を設定すると、売上は2週間ごとに振り込まれるため、資金繰りの計画が立てやすいのが特徴です。
通常のECサイトでは振込までに1カ月以上かかるケースもあり、状況によっては資金繰りが厳しくなることもあります。
その点、Amazonでは定期的に売上が振り込まれるため、商品の仕入れもスムーズに行え、長期的な運営がしやすくなります。手数料はかかるものの、資金管理のしやすさという点では、Amazonの入金サイクルは大きなメリットと言えるでしょう。
Amazonで出店するときに注意しておきたいポイント
Amazonは手数料が発生するものの、出品することで多くのメリットを得られるため、前向きに検討する価値があります。しかし、出店する際には注意すべき点もあるため、事前に把握しておくことが重要です。
ここでは、Amazonで出店する際に注意すべきポイントを紹介します。
出品が禁止・制限されている商品がある
Amazonでは多くのカテゴリーの商品を出品できますが、すべての商品が自由に出品できるわけではありません。
特に、模造品や偽造品に対する取り締まりが強化されており、正規品でないと判断された場合、出品が制限される可能性があります。また、新規出店で実績の少ない店舗は、信頼性の面で制限を受けやすいため、注意が必要です。
さらに、特定のブランド商品や日本で販売が禁止されている物品もAmazonでは出品できません。
以下のようなカテゴリの商品は、特に規制が厳しいため、事前にルールを確認しておくことが重要です。
- 医薬品
- 酒類
- 動物・ペット関連商品
- 栄養補助食品
事前にAmazonの出品規約をチェックしないと、出品が認められず、売上に影響を与える可能性があるため、注意しましょう。
プライバシーの保護対策をしておく
Amazonで出店する際には、出品者情報が開示されるため、プライバシー保護の対策が必要です。
商品の購入者には、出品者情報として事業所の住所などが表示されるため、事前に対策を講じておかないと個人情報が不特定多数に公開される可能性があります。
会社やオフィスの住所を設定している場合は問題ありませんが、自宅を登録していると、多くのユーザーに自宅の所在地が知られてしまう恐れがあり、不安を感じる出品者もいるでしょう。
特に個人事業主の場合、自宅住所を登録してしまうケースも多いため、プライバシーを守りたい場合は、以下のような対策を検討することが重要です。
- バーチャルオフィスの利用
- 別途、事務所を借りる
個人情報の漏えいを防ぐためにも、適切な対策を講じた上でAmazonへの出店を進めましょう。
商品の価格をこまめにチェックする
Amazonで出店する際は、商品の価格を定期的にチェックすることが重要です。
出品後、初期設定した価格で売れ行きが良いと、そのまま継続する出品者も多いですが、Amazonでは商品の価格が常に変動しており、ユーザーはより安い商品を求める傾向があります。
もし競合が価格を下げ始めた場合、自社商品との比較で購入者が減少する可能性があるため、出品後も価格設定が適切かどうかを常に確認する必要があります。
また、競合商品より少し安く設定することで売上が増えるケースもありますが、過度に価格を下げると赤字になりかねないため、利益を確保できるバランスを考慮しながら価格調整を行うことが重要です。
販売手数料が商品によって割高になるケースもある
Amazonの販売手数料は、商品カテゴリーごとに異なるため、事前にコストを計算しておくことが重要です。
最も高い販売手数料は15%で、以下のジャンルが該当します。
- 本
- CD・レコード
- TVゲーム・PCソフト
- 文房具・オフィス用品
- DIY・工具
- ホームインテリア・キッチン用品
販売手数料が高いと、商品が売れても手元に残る利益が少なくなるため、出店時には扱う商品の手数料を考慮することが大切です。
独自の店舗ページを作成できない
Amazonで出店する際は、独自の店舗ページを持てない点を考慮する必要があります。
他のECサイトでは、店舗ごとに独自のデザインや広告を設定できるため、ユーザーに対してブランドの特徴を強くアピールすることが可能です。
しかし、Amazonではすべての出品ページが統一されたレイアウトになっているため、店舗ごとに差別化を図るのが難しく、ブランドの個性を打ち出しにくいというデメリットがあります。
そのため、独自のデザインやブランディングを重視した販売を考えている場合は、Amazon以外の販売チャネルも検討する必要があるでしょう。
Amazonへ出品する際は、手数料をしっかりと確認しよう
この記事では、Amazonへの出店に関する手数料、メリット、注意点について紹介しました。
出品する商品や利用する代行サービスによって発生する手数料は異なるため、事前にしっかりと確認し、コストを考慮した上で出品を進めることが重要です。
また、Amazonでの販売にはメリットとデメリットがあるため、自社にとって最適な販売方法を計画し、戦略的に運用することが求められます。